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バイクを愛してしまったら、手入れしてあげたくなるのは自然なこと。

またひとつiBの夢が叶いました!(3/3)

 KAWASAKI マッハ 750cc H2 ビレット(削り出し)シリンダー 試走。


ただのアルミの塊から完成部品のシリンダーを削り出してしまう!
それはiBの夢でした。

でも、零細企業のiBにはただの夢でなにも利益を期待できないことに設備投資や開発時間の捻出などできるはずはありません。では、iBはそこをどう考えてこの開発に挑んだのか。
 
試行錯誤を繰り返した今回の開発にかかったコストを全部回収しようとしたら、今回のH2の3個のシリンダーに100万円の値札をつけてもまったく元はとれませんし、そんな価格のシリンダーを買ってくださるお客様もいらっしゃらないでしょう。
 
実は有名なDMG森精機さんに最新の5軸MC(マシニングセンター) でこのシリンダー を1個削るのにどれだけの時間がかかるか参考までに見積もりを出していただきました。iBで作った3Dのモデリングデータを渡して試作プログラムを組んでもらったんです。すると、なんと1個6時間ほどで加工ができるということなんです!す、凄い!!@_@

DMG森精機 5軸加工機 DMU50
 
iB所有の年季が入ったMCではそこまでの加工速度は出せませんが、それでも工夫をすれば、例えばその半分の効率で12時間くらいで加工ができるかもしれません。
 

iB所有横型MC HC400 2台
 
もし、この加工時間で安定加工ができるということになったら、残業しないiBですから夕方の5時にMCに素材を取り付けて、夜の間に無人加工して、朝になったらシリンダーが1個削り出せている。そういうこともできないこととは言いきれませんよね。これなら人件費はゼロ。電気代だけで毎朝1個のシリンダーができて、1ヶ月では7台分21個のH2シリンダーができてしまう! (^o^)
 
これならコストの問題も解決できるかもしれない?!?

ま、そんなに簡単にはいかないでしょう。でも、iBの見る夢なんて、いつも初めはこんな感じですよ。とうていできそうにもない夢なんですけど、でも諦めないでずーっと考えていると、いつの間にかちょっとカタチは違うけど、同じようなことが実現してしまう。いつもそんな感じでiBは夢を実現してきました。
 
さて、やり方はどうあれコストの問題はいろいろな努力で段々に下がっていく可能性がある、と思います。
 
一方需要のほうはどうでしょう。これもいろいろな考え方はあると思いますが、iBでは現在の日本の旧いオートバイを取り巻く環境について考えると、おそらくこれから10年から15年間は「旧いオートバイの黄金時代が続く」と考えているんです。(新車の販売とはまったく別のお話です)
 その間、全体としてはメーカーからの新品のオートバイ部品の供給は減る一方でしょう。旧いオートバイの現存数も段々減っていく。逆に旧いオートバイの人気は高まる一方でヴィンテージ バイクの価格は高騰していきます。それにつれて旧車部品の価格も上昇していきます。
 
そうすると、どうなるか。

グラフで表せば旧いオートバイ用部品の生産コストは右肩下がりで下がっていく。一方、需要は右肩上がりで上がっていく。
この二つの曲線が交差するどこかの時点で、きっと削り出しエンジン部品が事業として成立することになるのだろうと考えているんです。

そのときのためにエンジン部品機械加工の専門家である我々iBは誰よりも先に準備をしておく必要がある。こういう考え方で今回のH2ビレットシリンダーの製作は実行に移され、そして今回ついに完成することができたんです。
 
 

 
後藤さんによると今回のビレットシリンダーはパワーのピークが500rpmほど上にあがってよく回るようになり、パワーバンドも広がっているということです。
iBはそれを狙ったわけではありませんが、ノーマルよりは多少なりとも元気の良いエンジンにするつもりでした。成功です。



もちろん最大の狙いは「永遠のような耐久性」のほうにあります。IN/EXポートに柱を立てたデュアルポートによってピストンスカートやピストンリングのポートへ飛び込みをいっさい起こらなくして、さらに超高硬度のメッキによってほんとうに「減らない」と言っていいほどの耐摩耗性を実現しています。
 

 
同時に軽量・高放熱性・低摺動抵抗・対焼付特性・膨張率の均一化によるクリアランスの一定化・さらに錆びないことなど数多くの美点を持つICBM®であることは言うまでもありません。
 
 

 
後藤さんは30分2回のライディングを順調にこなしていきます。その姿を観ながら、iB井上はこれから先のオートバイの世界の姿をそこに重ね合わせていました。
 

 
旧いオートバイはしっかりと手を入れれば、あのように新しいバイクにも劣らないほど素敵にどこまででも走っていくことができる。
 
そしてそれは機械メカニズムだけに実現できることであって、機械式時計やフィルム式カメラと同様に永遠の命を持った機械だけが人類に観させてくれる永遠性の夢なんです。クォーツ時計やデジタルカメラ、そしてこれから世界を席巻するだろう電気式の乗り物にもけして脅かされることのない「機械式」の美学。
 
いままさに目の前で後藤さんとiBが削り出したシリンダーが走りでそのことを証明して見せてくれている。
【金属でできたエンジン部品は何度でも素材から削り出して再生することができる。】

"REINCARNATION" 輪廻・転生

 
iBはこのことをもっと世の中に伝えていきたいと思います。そして世界中の旧いオートバイを愛する方々と力を合わせて、20世紀が我々に残してくれた機械遺産としてのヴィンテージ モーターサイクルを22世紀の未来まで残していきたいと本気で考えているんです。
 

 
      --完。